新婚の定義──嘘つきな君と僕──
ライブ会場に到着したレナと相川は、早速リハーサル風景の取材を始めた。

ステージの近くでカメラを構えているレナを見つけたユウが、ファインダー越しに優しく微笑んだ。

レナもほんの一瞬、ユウに微笑み返した。


そんなユウとレナの幸せそうな顔を見て、タクミは肩をすくめる。

(あー残念…早くも仲直りしちゃった感じ?)

二人が幸せならいいやと思いながらも、レナがユウといて悲しむくらいなら、本当に自分を選んでくれないかと思ってみたりもする。

レナにも、ユウにも言った言葉は、ただの冗談と言う訳でもない。

もしレナが自分を選んでくれるなら、喜んでこの先の生涯を共にするつもりだ。

ユウほどレナに恋い焦がれているわけではないけれど、初めて会った時から、なんとなくレナに惹かれている自分がいる。

自分が呼べばすぐに“タクミが呼んでる”と気付いてもらえるように、誰も呼ばない呼び方でレナを“あーちゃん”と呼ぶ。

もしユウがレナを好きじゃなかったら、なんの遠慮もなくレナにアタックしていただろう。

自分でも不思議な、掴み所のない曖昧な愛情。

自分の手で誰よりも彼女を幸せにできるなら、と思う。

(でも結局、あーちゃんはユウとうまくいってる時が、一番幸せそうな顔するんだよな。オレは、あーちゃんを幸せにしてあげたいだけだから、ユウから無理やり奪ってあーちゃんを悲しませるつもりなんかないんだ。)



タクミはカメラを構えてシャッターを切るレナに向かって、笑って両手でピースサインをして見せた。

レナはそんなタクミを見て、おかしそうにクスクス笑った。

(ユウに、気持ちがちゃんと伝わって良かったね、あーちゃん。オレの気持ちは一生伝わらなくても、あーちゃんが幸せそうに笑ってくれたら…オレは、それだけで幸せだよ。)

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