新婚の定義──嘘つきな君と僕──
「じゃあ、そろそろ行くか。」

メンバーたちが帰り支度を終えて楽屋を出ようとした。

「片桐さんと相川くんは?」

「オレは最終の新幹線で帰ります。」

「そうなんだ。片桐さんは?」

「私も。」

「ユウ、愛しい妻と、しばしの別れだな。」

メンバーたちがぞろぞろとドアへ向かう。

レナもそれに続こうとすると、ユウが黙ってレナの手を握り、引き留めた。


二人きりになった楽屋のドアが静かに閉まる。

レナが驚いてユウの方を振り返ると、ユウはレナの唇に不意打ちのキスをした。

「しばらく会えないから。」

「…うん…。」

ユウはもう一度レナに口付けて、レナを引き寄せ抱きしめる。

「ちゃんと、旦那の帰りを待ってるように。」

「ハイ。」

ユウがレナの頭を撫でると、レナも微笑んだ。



メンバーと会場の前で別れ、レナと相川は二人で駅へ向かう。

「オマエの旦那、男前だな。」

「ん?」

「愛されてるねぇ…。」

「うん。」

「付け入る隙はない、か…。」

「ん?」

「いや、なんでもない。」




< 176 / 269 >

この作品をシェア

pagetop