新婚の定義──嘘つきな君と僕──
車を降りて二人で店内に入る。

明るくゆったりとした雰囲気の店内で、パスタのランチをオーダーした。

「素敵なお店だね。」

「うん、窓からの眺めが最高。」

窓からの景色とおいしいパスタをゆっくりと堪能した二人は、再び車に乗り込んで、ガイドブックを開いた。

「どこか行きたいとこある?」

「私、ここ気になる。写真撮りたい。」

「よし、行ってみよ。」


二人はグラスボートに乗って、ガラス張りの船底からの魚の姿や、珊瑚礁などを眺めて楽しんだ。

海底に広がる神秘的な海の世界や、白装束に身を包んだ海女による海底ショーは、地上からは決して見ることのできない、とても興味深い光景だった。

船が円月島のすぐ間近まで来た時、レナが嬉しそうにその景色を眺めながらユウに尋ねる。

「夕方、この島をあっちの砂浜から撮りたいんだけど、いい?」

「ん、いいよ。どうして?」

「和歌山の夕陽100選に選ばれてるんだって。自分の目で見て、撮ってみたいの。」

「へぇ…。それは見ておかないとな。」


レナは本当に写真を撮るのが好きなんだな、とユウは思う。

高2の時に、担任に勧誘されて軽い気持ちで写真部に入ったレナが、今ではプロのカメラマンだ。

(人生、何がどう転ぶかなんて、わかんないもんだな…。オレもまさかレナと一緒になれるなんて、思ってもみなかった…。)

あの頃は、ただレナを想うばかりで、自分の気持ちも伝えることができなかった。

それが今では、自分には一生無理かもと思っていた結婚をしている。

それも、相手は幼い頃からずっと想い続けたレナであることが、ユウには奇跡のようにも思えた。
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