新婚の定義──嘘つきな君と僕──
「そろそろ戻らないとな。」

「そうだね…。」

コインロッカーに預けたレナの荷物を取りに海のそばの公園までタクシーで戻った。

「まだ少しなら時間あるから、ちょっと散歩でもする?」

「うん。」


夕暮れ時の神戸の海辺を手を繋いで歩いた。

また少しの間離れるのが寂しくて、二人は繋いだ手に力を込めた。

「一緒に暮らし始めてから別々の場所に帰ることってなかったから…こういうの、すごく久し振りかも。」

ユウが呟くと、レナはユウを見上げて尋ねる。

「久し振りって?」

「昔はずっと、当たり前みたいに一緒にいたけど、そろそろ帰ろうかなってレナが言うと寂しくてさ。どれだけレナを抱きしめて引き留めたいと思ったことか…。」

「そうだったの…?」

レナは少し照れ臭そうにユウを見る。

「そうだよ。レナはそんなの全然気付きもしないで、いつもあっさり帰っちゃったけどな。レナと再会した後も、まだ付き合う前は、レナに好きだとかもっと一緒にいてくれとか言えなかったから。会えると嬉しいのに別れ際は胸が痛くて痛くて…。」

「知らなかった…。」
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