新婚の定義──嘘つきな君と僕──
歩きながら、ユウが大きな観覧車を指さした。

「あれ、乗ってみようか。」

「うん。」

二人は海の上のショッピングモールに隣接された大きな観覧車に乗ると、窓から神戸の夕景を肩を寄せ合って眺めた。

「さっきの話なんだけど、私も1度だけ覚えてる。18歳の誕生日、一緒にテーマパークに行ったでしょ。あの時、ずっと手を繋いで、いつもよりゆっくり歩いて…。」

「気付いてた?」

「うん。でも、私もあの時、もっとユウとこのまま一緒にいたいって思ってたから…。家の前まで帰って来て手を離したとき、なんかわかんないけど寂しかったの。」

「あの時、オレが勇気だして告白してたら、レナはなんて言ったんだろうな。」

「わかんないよ…。あの時はまだ、自分の気持ちにも気付いてなかったから。ただ、ずっとユウと一緒にいたいって思ってた。好きだって言われたら戸惑ってたかも知れないけど、これからもずっと一緒にいようって言われてたら、うんって答えたのかもね。」

「それは恋人としてじゃなくて、幼なじみとしてだろ?」

「そうかもね。ずっと一緒にいたから、どこで線を引くのか、余計にわかんなかったのかな。あのまま10年後も一緒にいたら、今みたいな気持ちではなかったのかもね。」
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