新婚の定義──嘘つきな君と僕──
レナが去り楽屋にはユウとケイト二人だけになった。

「ユウ…私はやっぱり、ユウが好き。」

「ごめん。オレには大事な人がいるから。」

ユウが言い終わるより早く、ケイトがユウに抱きついた。

「どうして私じゃダメなの?あの子のどこがそんなにいいの?」

「どこがって…。全部だよ。ケイトがダメとかじゃなくて、オレはどうしてもレナじゃないとダメなんだ。」

「あの子にあって私に足りないものって何?」

「それは…オレの気持ち…。昔からオレは、レナが好きだった。ロンドンにいた頃は、もう会えないと思ってたから…レナのいない寂しさを埋めてくれる人なら誰でもいいって思ってた。ケイトには言ったことなかったけど、ロンドンにいた間、ケイト以外にもいろんな女の子と寝た…それでもレナの代わりなんていなかった。」

「私だけじゃなかったの…?」

「うん…。」

「いや…。私のこと好きだって言って。あの子じゃなくて私を見て。」

「ダメだよ。オレが愛してるのはレナだけなんだ。レナがいないと、オレは生きている意味がないんだ。オレの一生かけて、レナを愛して守るって約束したから。」

「お願い…。もう1度だけ抱いて。そうしたら…あきらめるから…。」

ケイトは涙を浮かべてユウを見上げる。

「それはできない。もう、これ以上レナを悲しませたくない。ケイトには悪いことしたけど…オレは…レナしか愛せない。」

ユウは体からケイトの腕をほどく。

「ごめん…。勝手だけど…ケイトには、自分だけを愛してくれる人を見つけて、幸せになって欲しい。」

ユウはケイトに背を向け、振り返ることなく、静かに楽屋を後にした。
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