新婚の定義──嘘つきな君と僕──
会場の外で、レナはベンチに座ってユウを待っていた。

(ケイトと何話してるんだろう…。)

気にはなったが、レナは不思議と不安な気持ちにはならなかった。

(少し前なら不安で仕方なかったけど…今は、ユウを信じてるって、胸を張って言える…。)

レナの気持ちを知ったユウが、レナを悲しませるようなことはしないと、レナは思う。

(ユウは、私だけのユウだもんね…。)


ぼんやりと街路樹を眺めるレナに、ユウが近付いて来た。

「お待たせ。」

「うん。」

レナが立ち上がると、ユウはレナのカメラが入った重いバッグを肩にかけて、レナの手を握って歩き出す。

「重いでしょ?」

「だからだよ。」

「…ありがと。」

二人で黙って歩いていると、ユウがポツリと呟く。

「聞かないの?」

「うん…。」

レナが小さく返事をすると、ユウは繋いだ手に力を込めた。

「ちゃんと、オレの気持ち伝えたから。」

「ユウの気持ち?」

「オレはレナじゃないとダメなんだって。レナがいないと、オレの生きる意味がないんだって。」

「…生きる意味?」

レナはユウを見上げて首を傾げる。

「オレの一生かけて、レナを愛して守るって、約束しただろ。」

「うん…。」

レナはユウの気持ちが嬉しくて、目に涙を浮かべた。

温かな雫が、レナの頬を伝う。

「ありがと…ユウ…。」

ユウは立ち止まって、レナの頬を濡らす涙を指で拭う。

「泣くなよ…。」

「だって…。」

「ずっと、そばにいる。誰よりもレナを幸せにするから。」

「うん…。」

ユウはレナを抱き寄せ、愛しそうにレナの頭を撫でた。

ユウの胸に顔をうずめて、レナは幸せな涙を流した。

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