新婚の定義──嘘つきな君と僕──
打ち上げが終わり部屋に帰ると、ユウとレナはソファーに身を沈めて水を飲んだ。

「楽しかったね。」

「ライブの後の酒は格別だからな。」

二人は顔を見合わせて笑う。

「ねぇ、ユウ…。ユウっていつも、ライブ中にピック投げたりするの?」

「ん?しないよ。したことない。」

「でも、今回のツアーで、私に向かって投げたでしょ?」

「ああ…レナだけは特別。」

「特別?」

「うん。ライブ中は、レナがどんなに近くにいても抱きしめられないから。オレがレナのこと見てるのわかって欲しいし。レナにももっとオレのこと、見てて欲しいから。」

「そうなんだ…。私、ユウに溺愛されてる。」

レナは笑ってユウの肩に身を預けた。

「そうだよ。昔からオレは、ずっとレナに溺れてんの。だから、レナが遠くにいたってすぐに気付くし、どんな格好してても気付く。」

ユウはレナを優しく抱きしめ、キスをした。

「レナに秘密にされた。」

「ん?」

「『秘密』のアンリちゃん。」

「だってあれは…ユウにもみんなにも秘密にしとくようにって、ダディに言われたから。」

「ダディ?」

「ヒロさん。私のこと、娘だと思ってるって。だからダディって呼べって。ダディも私のことレナって呼ぶの。オレとレナは仲良し父娘だーって。」

「えぇーっ…。」

ユウは思わずため息をつく。
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