新婚の定義──嘘つきな君と僕──
「うん。ダディがね、お互いの懐探り合ってるうちは何年経っても新婚だ、って。新婚のうちにできるケンカはしておけ、って言ってた。」

「なるほどなぁ…。ヒロさん48くらいだっけ?ハタチで結婚してすぐに子供が生まれて、その子ももう立派に巣立っちゃってるから、新婚時代にゆっくり過ごせなかった分、奥さんと二人きりの新婚気分生活楽しんでんだよ。ヒロさん愛妻家だし、奥さんはヒロさんに甘いし。」

「素敵な夫婦だね。」

「新婚のうちに、二人じゃないとできないこといろいろしておこうか。」

「どんなこと?」

「とりあえず、ゆっくり新婚旅行しよう。」

「沖縄行きたいな。」

「そう言えば、修学旅行の時におそろいで買った琉球ガラスのグラス、どうした?」

「…大学の近くに引越した時、荷物整理してたら落として割っちゃったの。ユウとおそろいなのにって、悲しくて泣いちゃった。」

「じゃあ、今度また一緒に買いに行こう。オレもロンドン行く前に、レナのこと忘れるつもりで全部処分したから、もう持ってないんだ。」

「そうなの?」

「結婚前にアルバム見せてもらった時に、あれどうしたかなって思ってたんだけど、ずっと聞きそびれてた。」

二人は手を握り、顔を見合わせて笑った。
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