新婚の定義──嘘つきな君と僕──
ヒロと別れて家に帰ると、ユウはソファーに座ってタバコを吸いながら、あれこれと考えを巡らせた。

(レナへの素直な気持ちを歌にしろとか…急に言われてもなぁ…。)

ユウが考え込んでいると、仕事を終えたレナが帰宅した。

「ただいま。」

「おかえり。」

レナは買い物袋をキッチンに置くと、ユウの方へ近付いてくる。

「どうかした?」

「ん?」

レナはユウの眉の間を指でつつく。

「眉間にしわ。」

「あっ…。」

(ダメだ、こんなんじゃすぐバレる…。)

レナはユウの隣に座ってユウの顔を覗き込む。

「何か難しいこと考えてた?」

「いや、たいしたことじゃないんだ。新曲のこと考えてただけだから。」

「ふうん…?」

ユウは不思議そうに首を傾げるレナを抱き寄せて、頬にキスをする。

「今日の晩飯は何?」

「今日は肉じゃがとほうれん草のお浸し。」

「手伝おうか?」

「ホント?じゃあお願いしようかな。」


それから二人でキッチンに立って夕飯の支度をした。

なんでもないレナとの日常が、とても大切で、幸せだとユウは改めて思う。

レナの笑顔は穏やかで、もう嘘をついて笑う必要はなくなったんだと思うと、ユウの心は温かいもので満たされた。

(ヒロさんの言うレナへの素直な気持ちって、こういう気持ちのことなのかな…。)





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