新婚の定義──嘘つきな君と僕──
それからしばらく経って、ケイトがイギリスに帰国した。

何事もなかったように、ケイトは笑って日本を発った。

ただひとこと、本当に好きだった、と呟いて、ケイトは何もかも吹っ切れたように清々しい顔で笑った。

ケイトの想いに気付きながらもそれに応えることもできず、結局は傷付けてしまったことが申し訳なくて、ユウはごめんと言う代わりに、幸せになれよと言った。

いつかケイトにも、心から愛し合える誰かが見つかることを、ユウは心から祈った。



いつしか季節は夏になり、ユウはヒロの元で秘かにレコーディングを行っていた。

曲のアレンジをヒロが手掛け、ユウはギターを弾き、歌を歌う。

元々ボーカルじゃないユウは、本当に自分の歌が世に出ていいものかとも思ったが、引き受けてしまったからにはやるしかないと、心を込めてレナへの歌を歌う。

その甘く掠れた歌声を聴きながら、ヒロは満足そうに笑った。

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