新婚の定義──嘘つきな君と僕──
(最近わけのわからないオファーが多すぎる…オレはギタリストなんだけど…。)

ユウは困った顔で社長を見た。

「タクミとか、他のメンバーに引き受けてもらうわけには…。」

「それはないな。でもうまくいけば今後、CM曲とか、ステージ衣装の協力とかな。いろいろなメリットがあるんじゃないか?」

「はぁ…。」

(なんだ、この有無を言わさぬ感じは…。)

「とりあえず、引き受けろ。嫁さんの顔を立ててやれ。高梨さんも喜ぶだろ。」

「はぁ…。」

ユウの口からは、気の抜けた返事しか出て来ない。

「まぁ、そういうことだから。頑張れよ。」

(えぇっ?!オレには拒否権なし?!)

「わかりました…。」


ユウは肩を落として社長室を後にした。

そんなユウの様子を見て社長は苦笑いをする。

「ホントに欲のないヤツだ…。でもまぁ、高梨さん親子は、アイツのそういうところが気に入ってるのかも知れないな…。」
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