新婚の定義──嘘つきな君と僕──
ユウがヒロの元でレコーディングを終えた頃、`アナスタシア´での仕事が始まった。

カメラマンを須藤が務め、ユウはなんとも言えない緊張の中で写真撮影にいどむ。

(レナだけじゃなくて、オレまで…。)

いまだに腑に落ちない部分はあったが、ユウはカメラの前で指示された通りにポーズを取る。

「なんと言うか…レナにそっくりだな。」

「えっ?」

須藤の言葉の意味がわからず、ユウは首を傾げる。

「レナはカメラに目線を向けるのが苦手なんだよ。カメラに向かって笑ってと言われるのは、もっと苦手だ。ユウくんもそうかな。」

「そうですね…。あまり得意ではないです。」

「じゃあ、もっと自然な感じで撮ろうか。無理して笑ったりカメラ見たりしなくていいよ。」

(それもまた難しい気がするな…。)

レナはいつもこんなことをしているのかと、妙に感心してしまう。

(普通に…自然に…。)

ユウは須藤に言われた通り、シャツのボタンを留めながら目線をカメラから外す。

それから衣装を変えて、ソファーに座ったり、コートを羽織ったりする。

(こんなんでホントにいいのか?)

いまいち自分のモデル仕事に自信が持てないユウだったが、須藤の撮った写真をパソコンで確認して愕然とした。

(いつの間にこんな写真を…。)

ユウが気付かないうちに、須藤によって撮られた写真は、とても自然な表情をしていた。

(さすが…。)

「初めてのわりに、なかなか良かったよ。」

「どうも…。」

これがレナのポスターのように、`アナスタシア´の店舗に貼られるのかと思うと、無性に恥ずかしい。

(とりあえず、写真撮影はクリアだな…。)

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