新婚の定義──嘘つきな君と僕──
夕方、レナが帰宅すると、郵便受けには梱包材の感触のする厚みのある封筒がレナ宛に届いていた。

(なんだろ…。誰から?)

差出人欄には、`ALISON´の事務所の名前と住所がプリントされている。

(なんでユウの事務所から私宛に?)

レナはリビングで荷物を置くと、ハサミで封筒を開け、その中身を確認してまた呆然とした。

(えっ?!何これ?どういうこと?)

それは、ユウのソロデビューCDだった。

ジャケットには照れたように視線を外すユウの写真の下に`片桐悠´と書いてある。

(何これ…もう何がなんだかさっぱり…。)

封筒の中から、1枚の紙切れがはみ出しているのを見つけて手に取り、文字に視線を落とす。


“ビックリしたか?
できたてホヤホヤ、
発売前の旦那のソロデビューCDを
プレゼントしてやる!!
ダディから娘への初めてのサプライズだ!!”


ヒロの手書きと見られる短い手紙に、レナは絶句した。

(えぇっ…ダディ…面白がってる?!)


とりあえず、レナはCDを聞いてみようとプレイヤーにセットする。

ケースからブックレットを取り出し開いてみると、そこには収録曲のタイトルが並んでいた。

スピーカーからは静かに音楽が流れ出す。

(この曲…ユウが高校の時に作った曲…。)


高校時代、ユウの伝えられないレナへの想いを歌にした『そして今日も、君を想う』。

これから人生を共にするレナのために、結婚披露パーティーで歌った『君と僕を繋ぐもの』。

そして3曲目には、今回のソロデビューのために新たに作った曲で、ユウがレナへの素直な気持ちを歌った『嘘つきな君と僕』。


ユウの優しいギターの音色に乗せて、甘く掠れた歌声がレナの耳に流れ込む。


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