新婚の定義──嘘つきな君と僕──
「高梨さん、プリンめちゃくちゃうまかったです。ご馳走さまでした。」

ハヤテが軽く頭を下げる。

「どういたしまして…。」

レナも笑って軽く頭を下げる。

「もう高梨さんじゃなくね?」

トモが言うと、ハヤテとリュウも顔を見合わせてうなずいた。

「確かに…。」

「じゃあ、なんて呼べばいいんだ?」

「レナさん?」

「アリシアさん?」

「ユウの奥さん?」

「ユウのお嫁さん?」

「ユウのカミさん?」

「ユウのハニー?」

「思いきってレナ?」

「いや…あの…高梨でいいです…。」

レナが恥ずかしそうに言うと、ずっと黙っていたユウがポツリと呟く。

「片桐さん、でいいんじゃないのか?」

「あー…。なるほどね。」

「じゃあ高梨さん改め片桐さん、プリンご馳走さま。ゆっくりしてってね。」

「ハイ…。」

「よっしゃあ、いっちょやるかぁ。片桐さん、ユウじゃなくてオレを見ててね。」

「トモーっ!!」

ユウの大声に笑いながら、トモはスタンバイを始めた。

(なんか…どっと疲れが…。)

軽い気持ちで付いてきたものの、こんな調子で密着取材は大丈夫なのかと、レナは少し不安になる。

(今日はプライベートだからいいとしても…仕事は仕事でちゃんとしたいんだけどな…。)


スタンバイを終えた`ALISON´のみんなは、新しいアルバムの曲の練習を始めた。

さっきまでふざけていたのが嘘のように真剣なメンバーたちを見て、レナはホッと胸を撫で下ろした。

(うん…大丈夫だよね…。)

レナはイスに座り、演奏に耳を傾ける。

ギターを弾くユウの姿を見つめながら、レナは嬉しそうに笑みを浮かべた。

(ギター弾いてるユウって、やっぱりカッコいいな…。)

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