新婚の定義──嘘つきな君と僕──
深夜の2時を過ぎた頃、ユウが帰宅した。

(また遅くなっちゃったな…。)

真っ暗なリビングに、レナの部屋のドアの隙間から、うっすらと明かりが漏れている。

(あれ…?レナ、まだ仕事してるのかな?)

そっとレナの部屋のドアをノックしても返事がないので、ユウは静かにドアを開けた。

レナはベッドに突っ伏して座ったまま、すやすやと寝息を立てている。

テーブルの上には、ビールの空き缶が3つ。

(レナが一人でこんなに飲むなんて珍しいな…。)

「レナ…。」

ユウは眠っているレナに小さく呼び掛けながら寝顔を覗き込んで、その頬にうっすらと、涙の跡が残っていることに気付いた。

(涙の跡…?レナ…泣いてたのか…?)

レナは何も言わないけど、本当はいろんなことを気にしているのかも知れない。

ユウの知らないところで、一人涙を流しているレナを思うと、ユウの胸はギリギリと音を立てて痛んだ。


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