新婚の定義──嘘つきな君と僕──
スタッフのチーフの説明を聞きながら、レナはぼんやりと考える。

(イギリスの歌手で、ロンドンにいた頃からのみんなの音楽仲間…。でも、ユウにだけは…特別会いたかったんだよね…。)

レナはハッとして、雑念を振り払うように、真剣に説明に耳を傾けた。


ケイトは彼らとのツアーに同行し、コラボ曲を一緒のステージで歌う。

現在は曲作りが急ピッチで進められていて、準備が整い次第レコーディングに入ると言う。

それからCDが発売になると、テレビ番組の出演や雑誌の取材など、しばらくは彼らと音楽活動を共にする。


(随分急な話…。)

彼女と再会してからの数日で、そこまで話が進んでいることに、レナは驚いた。

(ユウ…また忙しくなるんだな…。)

仕事だから仕方ないとわかってはいても、あのケイトと言う女性が一緒だと言うことが、レナの心をざわつかせる。

(私は…ユウを、信じてる…。)

レナはケイトから向けられた敵意むき出しの視線を思い出しながらも、自分に言い聞かせるように何度も心の中で呟いた。

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