新婚の定義──嘘つきな君と僕──
「レナ、お疲れ。」

打ち合わせを終えると、相川が笑顔でレナに話しかけた。

「あ…相川くん、お疲れ様。」

「一緒に昼飯でもどう?」

「私、この後まだ別の撮影の仕事があって、ちょっと急ぐの。」

「そうか。じゃあ、またの機会に。」

「うん。」

レナは荷物をまとめて立ち上がると、チラリとユウを見る。

ユウは、レナと相川の会話を聞いて、呆然としていた。

(今、コイツ…レナって呼んだ…。レナも、相川くん、って…。やけに親しげだけど…。)

「ユウ、どうしたの?」

レナに尋ねられて、ユウはハッとした。

「いや…。これからまた撮影?」

「うん。行ってくるね。」

「あぁ、うん。頑張って。」

レナは小さく手を振って、会議室を出ようとした。

「レナ、オレもそこまで一緒に行くよ。」

「あ、うん。」

レナと相川が二人で会議室を後にすると、その様子をそばで見ていたタクミが、ユウのそばに来て小さく呟く。

「レナ、相川くん、だって。あの二人、随分親しげだね。」

「……なんだよ。」

「気になるくせに。」

タクミは小さく笑いを浮かべる。

「それでも、ユウはユウで言えないことがあるから聞けないとか?」

タクミの言葉に、ユウは言葉を失った。

「そんなんで、この先大丈夫なの?夫婦として。」

タクミは言いたいことだけ言うと、さっさと会議室を出て行った。
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