新婚の定義──嘘つきな君と僕──
(痛いとこつかれた…。)

ユウはあれから結局、レナにはケイトと自分の関係を何も話さなかったし、レナもそれを聞こうとはしなかった。

(言えないことがあるから聞けない、か…。)


ロンドンにいた頃、ユウたちはまだひとつのバンドと言う形ではなく、ヒロや、ヒロと親交のあるミュージシャンたちのバックについて演奏したり、他のバンドのヘルプに入ったりしていた。

ケイトとはユウがヘルプに入ったバンドで知り合い、歳が近いこともあって、ユウを慕ってくるケイトとはすぐに仲良くなった。

バンド活動だけでなくプライベートでも頻繁に会い、付き合っていたわけではないけれど、それと同じぐらいの関係だった。

お酒の勢いに任せて、何度かベッドを共にしたこともあったが、ただそれだけで、音楽活動を優先して、恋人と言う形にはならなかった。


(そんなこと…レナには言えない…。)

一度だけならともかく、ケイトとはそれ以上の関係だったと、ユウも自覚はしているし、メンバーたちも薄々は感づいているのだろう。

まさか日本に戻ってまで、会うことになるとは思ってもいなかったケイトと、しばらくの間、音楽活動を共にする。

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