新婚の定義──嘘つきな君と僕──
誕生日のお祝いに、とメンバーたちに誘われ、バーでパーティーを開いてもらったユウは、少しふらつく足取りで帰宅した。

時刻は、午前3時半になろうとしている。

真っ暗なリビングの電気をつけると、ユウは冷蔵庫から水を取り出して勢いよく飲んだ。

(かなり飲まされたな…。)

水を飲みながら、ユウはテーブルの上に置かれたケーキに目を留めた。

(誕生日ケーキ…。)

レナが作ったケーキの横には、リボンのかかった包みが置いてある。

(レナ…待っててくれたんだ…。)

今日は帰りが遅くなると言い残して出掛けたのに、レナは自分のためにケーキを作り、プレゼントを用意して待っていてくれたのだと、ユウは申し訳ない気持ちになる。

(レナの誕生日でもあったのに…。)

一緒に思い出を作って行こうと約束したのに、誕生日を一人で寂しく過ごさせてしまった。

レナがユウを待っている間、ユウは仲間たちから誕生日を祝ってもらい、賑やかな時間を過ごしていた。

(またレナに寂しい思いさせた…。)

ユウは部屋に入り、ベッドのそばに行くと、うずくまるようにして眠るレナの寝顔をそっと見つめる。

(また、涙の跡…。)

最近、どれだけレナを、たった一人で泣かせているのだろう?

翌日ユウが謝っても、レナは一度もユウを責めもせずに、気にしないでと笑う。

(ユウのバカ!!って…責めたって、怒ったっていいのに…。)

ユウは、気を遣って何も言わないレナに、寂しさを覚えた。

(何も言わないで…何もなかったような顔して…レナは嘘の笑顔を浮かべるんだ…。)

眠っているはずのレナが、夢を見ているのか眉をひそめて、涙を流した。

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