新婚の定義──嘘つきな君と僕──
(レナ…?)

「ユウ…行かないで…。」

涙を流しながら、レナが呟く。

ユウはたまらずレナを抱き寄せた。

「行かないよ…オレは、どこにも行かないから…。」

ユウはレナを抱きしめながら、レナの髪を何度も撫でた。

「オレが好きなのは…レナだけだから…。ずっと、そばにいるから…。」

ユウの腕の温もりを感じて、レナがゆっくりと目を開く。

「ユウ…。良かった…ここにいてくれて…。もう会えないかと思った…。」

「ごめん、レナ…。オレは、もう…どこにも行かないから…一人で泣かないで…。」

ユウはレナを抱きしめる腕に力を込めた。

「おかえりなさい…。」

レナはまつ毛を涙で濡らしたまま微笑む。

「ただいま…。オレが帰る場所は、レナのいるここだけだよ…。」

「うん…ありがとう、戻って来てくれて…。」

レナはユウの腕の中で、静かに呟いた。

「レナ…待っててくれてありがとう…。」

「うん…ユウ…。」

レナはユウにそっと口付けた。

「お誕生日、おめでとう…。」

ユウの胸に顔をうずめて、レナは幸せそうに微笑んだ。

「ユウ…愛してる…。」

ユウは、レナを強く抱きしめながら、目に涙を浮かべた。

「レナ…愛してる…。誕生日、おめでとう…。大事な日に、寂しい思いさせてごめん…。」

ユウに抱きしめられながら、レナはまた、静かに寝息をたて始めた。

安心したようにすやすやと眠るレナの髪に、ユウの涙が落ちる。

「愛してる…。」

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