新婚の定義──嘘つきな君と僕──
ユウはたくさんの店の並ぶ通りを歩きながら、レナに喜んでもらえる物はないかとショーウィンドーを覗き込む。

(バッグか…いいかも…。)

ユウはそのショップに入り、あれこれと手に取ってレナに似合いそうなバッグを探す。

(これにしようかな。)

気に入った色とデザインの中から、レナが普段使っているのと同じくらいの大きさで、軽くて使いやすそうな物を選んだ。

レジに向かいかけて、たくさんの髪飾りがディスプレイされているのを見つける。

(髪飾りか…。そう言えばレナって、全然そういうのつけてないな。)

ユウはたくさん並ぶ髪飾りの中から、淡い桜色のバレッタを手に取った。

それは桜の花が描かれていて、桜の季節に生まれたレナにピッタリだと思ったユウは、それを少し遅いホワイトデーのプレゼントにすることにした。

バッグとバレッタをラッピングしてもらい、紙袋を受け取って店を出る。

(気に入ってくれるかな?)


ユウはそれを持って、事務所へ向かった。

今日は例のケイトとのコラボの打ち合わせで、できあがっている曲の中からライブで演奏する曲を選んで、事務所と同じ建物の別の階にあるスタジオで練習をすることになっている。

(早く終われるといいんだけどな。)


レナの喜ぶ顔が見たい。

レナの笑顔が見たい。

泣きながら微笑むレナじゃなくて、心から笑うレナを、思いきり抱きしめたい。

(最近オレ、レナにごめんばかり言ってる…。今日は、いつもそばにいてくれてありがとうって、言いたいな…。)


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