新婚の定義──嘘つきな君と僕──
`ALISON´のメンバーがそろって少しすると、プロデューサーのヒロが現れた。

「ヒロさん、おはようございます!!」

「おう、おはよう。」

ヒロがイスに座ると、スタッフがコーヒーを運んだ。

「それにしても急な話だな…。」

「スミマセン、ケイト側から猛烈なオファーがありまして…社長もすっかり気迫に負けてしまったようでして。」

「ケイトか…。ロンドンでバンドのボーカルやってる頃は、いまいちパッとしない子だったけどな…。えらくなったもんだ。」

ヒロはタバコに火をつけ、煙を吐き出しながらパソコンを操作して、楽曲のデータを開き、曲に耳を傾けつつ、譜面に目を通す。

「これ、ハヤテの曲か。」

「ハイ。」

「詞は?タクミか?」

「そうです。」

「タクミは名前通り、言葉を巧みに操るな…。かわいい顔して、腹ん中ひねくれてやがる。おもしれぇ。」

ちょっと皮肉っぽい恋の駆け引きの歌は、ヒロの持つケイトのイメージに合ったのか、ヒロはタバコを吸いながらニヤニヤしている。

(まただよ…こえぇよ、ヒロさん…。)

ユウはやんちゃなヒロの悪そうな笑顔を見て、背筋が寒くなる。
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