新婚の定義──嘘つきな君と僕──
ケイトはレナに気付くと、一瞬目を見開いて、レナに近寄って来る。

「あなた、ユウの…。カメラマンだったの?」

「ハイ。今日の撮影をするはずだったカメラマンが急病で来られなくなったので、代わりに私が…。」

「ふうん…。まぁいいわ。さっさと始めてちょうだい。」

レナのそばにいたスーツ姿の男性が、嬉しそうに声を上げた。

「高梨先輩じゃないですか!!お久し振りです!」

「え?」

「僕ですよ。水野です!!」

その男性は、中学の吹奏楽部と、高校の写真部の後輩の水野孝だった。

「水野くん…。」

「僕、音楽雑誌の編集部にいるんです。それで今回はケイトの記事を担当してます。」

「そうなんだ…。」

「じゃあ、早速ですけど、よろしくお願いします。」

「うん…。」

最近、やけに昔の知り合いに会うことが多いなと思いながら、レナはカメラを構えた。

「それでは始めます。よろしくお願いします。」

レナは複雑な思いを胸の奥にしまい、プロとして淡々と撮影を始めた。
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