新婚の定義──嘘つきな君と僕──
「私は今もユウが好き。ユウが私といる間もあなたのことをずっと好きだったなんて、私は絶対信じない。ユウが日本に帰ってあなたと付き合ったのも、結婚したのも、ただ懐かしさで勘違いしただけよ。」

ずっと黙ってケイトの話を聞いていたレナが、ポツリと呟く。

「私は…ユウを、信じてる…。」

レナはカメラの入ったバッグを肩にかけると、ケイトに頭を下げた。

「お疲れ様でした。失礼します。」

涙が溢れそうになるのをこらえながら、レナはスタジオを後にした。


スタジオを出て早足で歩いていると、目の前がじわりとにじんで、レナの視界がぼやけ、頬を伝ってポトリと涙が落ちた。

(もう…何も知りたくない…。ユウが誰と何をしていたかなんて…知りたくない…。)

レナはとめどなく溢れる涙を隠すようにうつむいて、ただ歩き続けた。

< 88 / 269 >

この作品をシェア

pagetop