新婚の定義──嘘つきな君と僕──
ヒロはタバコを灰皿の上で揉み消して立ち上がると、レナの頭を優しく撫でた。

「強いな…。それとも、アイツのために、無理して強くなろうとしてんのか…。」

「無理なんて…。」

レナはうつむいて、涙が溢れそうになるのをこらえた。

「つらい時はつらいって言えばいいんだ。オレは、レナちゃんを娘だと思ってる。オヤジの前では無理すんな。」

レナはヒロの温かい言葉に、ポロポロと涙をこぼした。

「本当は…過去に関係のあった誰かの影が見えるたびに、またユウが私を置いてどこかへ行ってしまうんじゃないかって、不安で…怖くて…苦しい…。」

「ちゃんと思ってること言えんじゃん。苦しくて壊れちまう前に、ここで全部吐き出しちまえ。オレが受け止めてやるから。」

「私、ユウを信じてるって言いながら、本当はいつも不安で…それでもユウを信じよう、信じたいって…。そんなの、信じてるって、言えないですよね…。」

「それでいいんだよ。好きなら不安にもなるし、疑ったり嫉妬したりしても、最後は信じようって思えるなら、それでいい。そうやって夫婦の絆ってのは深まっていくんだろ?」

「そう…なんですか?」

「そんなもんだよ。一度も疑わないなんて、あり得ないだろ?人間なんだから。」
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