新婚の定義──嘘つきな君と僕──
レナは指で涙を拭って、小さく微笑んだ。

「私も、人間ってことですね。」

「そうだよ。完璧でいる必要なんてない。むしろ、完璧な人間なんていねぇだろ?」

「ふふ…。少し、気がラクになりました。」

「こんなんでラクになれんなら、話ぐらいいつでも聞くぞ?」

「お父さんだから?」

「そうだな…。どうせならダディがいいな。」

「ダディ、ありがとうございます。」

「おう。かわいい娘ができて嬉しいねぇ。」

レナはヒロと一緒にコーヒーを飲みながら、自分にも3人目のお父さんができたことを嬉しく思った。


「それで…さっきの話なんですけど、コラボって…。」

「ああ、そうだった。レナちゃんさ、歌ってみない?」

「ハイ?!」

レナは思いがけないヒロの言葉に驚き、目を丸くする。

「あの…私、歌手ではありませんけど…。」

「いや…前からレナちゃんいい声してるなーって思ってたわけよ。オレも女の子のボーカル迎えてコラボしたいんだけど、なかなかいい子が見つからなくてさぁ。そんで、今回の曲にピッタリなのがレナちゃんだった。それだけ。」

「でも…いきなりそんなこと言われても…私、歌のレッスンとか受けたこともありませんし、人前に立つのは苦手で…。」

「そうかなぁ。前のファッションショーの時なんか、他のどのモデルよりも堂々としてた気がするけど。」

「あの時は必死で…。」

「なんとかなるって、オレもいるし。とりあえず、レコーディングだけでもどう?」

「えぇっ…。」
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