チョコ
「お。おい…どうしたんだよ!?」
こんな奴なんかに、涙なんて見せたくない。
「ほっといてよ!」
私は、背を向けた。
「ちょっと待てよ!」
その、最低男は、私に手を差し出したが、その手を振り払うと、走り出した。
「待てって!!」
何で、こいつは着いて来るのか…
しばらく、懐かしい鬼ごっこを思い出したかのように走り続けた。
限界…私と、その最低男は。公園のベンチに腰を下ろしていた。
その横には、その最低男が。
そして、しばらく涙が止まらず、私は泣いていた。
しばらくして、その最低男は、私にホットココアを差し出した。
「ふん!」
「何!?」
「やる。」
「いらない。」
「いいから、やるって。」
私は何故かそのホットココアを受けとっていた。
「何!?私が泣いてるのがそんなに面白い!?楽しい!?私が、振られたのが、そんなに面白い!?」
「フラレタ…って…」
私はつい、そのことを話していた。
「悪かったよ。」
「えっ!?」
「そんなつもり、ないから。俺、ちょっとイライラしてて、言い過ぎた。ごめん…」
こいつもしかしたら…
「俺さぁ、チョコが欲しかったんだよね。」
「はぁ!?」
何を言うかと思ったら。
何言ってんだろう、こいつ…
「俺さぁ、好きな子いてさ。その子、俺の親友にチョコあげてたんだ。てか、二人は俺に内緒で付き合ってたんだ。」
最低男だって思っていたけど、何だか、すごく可哀想に見えた。そして、私と同じように見えて同情しちゃう。
「私もね、同じなの。」
「えっ??」
「私…渡そうと思って待ち伏せしてたんだ。そしたら、その人、彼女いたんだ。
だから、本当はこのチョコなんて、どうでもよかったの。崩れたって、本当はどうでもよかったんだ。」
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