チョコ
昼休み、私と朱里は弁当を食べながら、『バレンタインデーに渡したい、手作りチョコ』という雑誌を見ていた。
「亜里沙は、佐助にあげるんだよね??」
「うん…まぁ…」
「そっかぁ。あのね、私も今日、聞いたんだけど…鈴木さん!別れたらしいよ。三週間前に。」
「まじ!?」
鈴木さんが別れた。
鈴木さんというのは、佐助が前に好きだった人だった。
一年前のバレンタイン、振られたというのは、この鈴木さんにだった。
それからも、佐助は好きだったみたいで…今は、よく分からないが…
朱里の知らせは私にとって、不都合なこと。佐助と、鈴木さんは、付き合う気がする。二人は付き合うかもしれないという噂まで出ていたから。
「鈴木さん、今は佐助くん好きらしいよ。」
朱里の言葉が胸に刺さる。
私はその日、朱里の言葉が頭から離れなかった。
授業中も休み時間も。帰るときだって…
「亜里沙~」
出た。今一番、会いたくなかった奴。佐助だ。
「帰ろうぜ。」
佐助とは同じ学校だ。
学校での佐助は、みんなの人気者であった。馬鹿だけど、面白くて、優しくて。顔だって男前だと思うし、女の子にも人気だった。
一年前に出会ったとき、振られたと聞いたときは、もてない奴なんだと勝手に思っていたが、その逆だった。
ふられたのは鈴木さんだし、仕方ない。みんなだって、そう言うはずだ。
鈴木さんは、学校一の美女と言われていた。
そんな鈴木さんが、佐助の事を今は好きなんて、本当に自信がなくなってくる。
けど一度、気持ち伝えるって決めたからには、やってやる!!今年こそは…
「おーい、亜里沙?聞いてんの??」
佐助は私の顔を覗き込んだ。
「あっ、ごめん、ごめん。」
「どした??」
「あのさぁ、佐助さぁ…」
「何?」
鈴木さんの事…聞きたかった。でも怖くて…
「鈴木さん、別れたの、知ってた??」
私は勇気を出して聞いた。
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