チョコ
「うん。」
そして、下駄箱へと向かった。
こんな時が一番幸せに感じる。
「あのぉ。佐助くん、ちょっと、いいかなぁ?」
長くて、綺麗な髪…鈴木さんだ。
「私、下駄箱のトコ先言ってるね。」
「分かった。」
私はその場から走りさった。
佐助にチョコ渡すのかなぁ…「先行ってるね」って笑ったけど、本当は笑えない。気になって、気になって。
また今年も、チョコ渡しそびれちゃうのかな…なんでいつも、もっと素直になれないんだろう。
「亜里沙、ごめん、ごめん。」
予想外に佐助は早く帰ってきた。
「チョコもらったの??」
「誰に??」
「鈴木さんに決まってるでしょ!」
「受け取らなかった。」
佐助は平然として言う。
「はぁ!?何で!?他の子のチョコだってもらったんでしょ?なんで鈴木さんのは受け取らないの!?」
「もらってねぇよ。」
「何で!?何で受け取らないの!?鈴木さん、可哀想じゃん。もっと女の子の気持ち、考えてあげたら??」
鈴木さんも他の子も私も同じ気持ちだから。
恋する気持ちは同じだから。
すると突然、佐助は怒鳴った。
「もっと人の気持ち、考えるべきなのはお前もだろ!?」
「何言ってんの?もう、いいよ。」
「何、怒ってんだよ。」
「別に怒ってないよ。」
言いたいことが言えない。こんなんじゃぁ。いつもの自分のまま。本当に言いたいことは、こんなんじゃないのに…
「亜里沙さぁ、言いたい事あるんなら、はっきり言えよ!」
言える分けないじゃん、こんな状態で。
「そっちこそ、言いたい事あるんなら、はっきり言ってよ!」
「あー分かったよ。鈴木たちのチョコより、ずっと欲しかったのは、お前のチョコなの!!亜里沙のチョコが欲しかったんだよ。義理でもいいから、亜里沙のチョコが欲しかったんだよ!!」
えっ…!?私のチョコが欲しかったって…それって…
「俺、お前の気の強いとこ、好きだよ。」
気の強い女、嫌いって言ってたくせに。
「バーカ!!何で私が佐助に義理チョコなんて、あげなきゃいけないの!!私が佐助にあげるチョコは、本命チョコだよ。」
ボロボロだけど、美味しくないけど、でも気持ちはたくさんこもっているから。
私はそっと佐助にチョコを渡した。
バレンタインがあって本当によかった。
私は心の中でそう呟いた
< 7 / 7 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

埋火

総文字数/35,691

恋愛(その他)52ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop