ホラー短編集
中学卒業ン時……。確かにそんなような事をした。でもなぜか記憶が曖昧ではっきりとは思い出せない。
「……忘れたか?」
再びトモヒロが問い掛けて来る。
「……悪い……ッ。あんま……思い出せねー……けどッ?」
「そうか……」
また黙りこくる。なんなんだ? 意味が全くわからないまま、ペダルを漕ぐとあともう少しの距離に坂の終わりが見えた。
「やっ……た。登りきっ……」
「オレの事も今まで忘れてたんだな」
――!? 今まで感じていたトモヒロの重みが急に消え、坂の頂上が見えた安心感から俺はバランスを崩した。
「……ッ!? なッ!」
間一髪、ペダルから足を放し、左足で全体重と自転車を支える。
「トモヒロ……? どうしたんだよ」
「なにがあっても忘れないって言った癖に……。約束、果たしてもらう」
約束……ってなんだ? 疑問に思いながらもトモヒロの体の線が次第にぼやけ始めた事に俺は驚いていた。
なによりも
さっきまでのトモヒロと違って……
トモヒロ自身に色がついていないのだ――。