ホラー短編集


「そりゃ、トモヒロはそうだろうけどさ。俺はトモヒロと違ってどんくさいし……」

 なんでも器用にこなすトモヒロとは対照的に、何をしても不器用な俺。なんで俺なんかと友達になったのか不思議でならなかった。

「そうだな~……。下手したら死ぬかもな」

「えっ!?」

「安心しろよ。死んだら骨は拾ってやるから」

 そう言ってトモヒロは悪戯っぽく笑う。

「え、縁起でもない事言うなよッ!」

「リラックスさせてやろうってんじゃん。でも……そうだな。お前が怪我でもしたら、焚き付けたオレのせいだし、なんでも言う事聞いてやるよ」

「じゃあ……もし死んだら?」

「死んだら? うーん……そうだなぁ」

 両腕を組んで考えるトモヒロに、俺が言った。

「……忘れないで欲しい、かな」

「そんなことでいいのか?」

「うん。だって、忘れなければずっとその人の中で生きていられるって。一番悲しいのは存在を忘れられる事だって」

「へえ。わかった。じゃあ、忘れないでいてやるよ」

「俺もトモヒロの事、絶対忘れない。もし忘れてたらその時は俺を道連れにしていーよ。そしたら寂しくないし」

「ばーか。オレは死なねーよ」

「そうかもしれないけど……でもそれでも、絶対忘れない! これから違う高校行っても、大人になったってトモヒロの事、俺絶対忘れないからッ!」





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