ホラー短編集
 男はその夜、携帯を握りしめて電話が鳴るのを待った。

 が、しかしいつもの時間が近づくとやはり意識をなくしてしまう。

 ただ、今日はいつもとは違った。

 男は夢を見たのだ。道路の真ん中に突っ立っている夢を。

 目が眩むほどの強いライトを当てられ、物凄い勢いで車が走り抜けていく。

 避けようと思うのだが、足がまるで根が這っているかのようにぴくりとも動かない。

「うわああああっ!!」

 男目掛けて突っ込んでくる車。それまで、横を掠めて走る車と違って避ける気配が感じられない。

 ぶつかる――!!




 
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