ホラー短編集
 全身の毛が総毛立つ男。

 ここにいてはいけない。

 足の先から髪の毛一本までもが男に危険信号を発している。なのに、男の体は凍りついてしまったように指一本動かせない。

 そうしてる間に、それは男の足首を掴めるほど近くに来ていた。

「…………っ!?」

 それまでゆっくりとした動きだったそれは、男の服を掴むと驚くような速さで男の体を這い上がってくる。

 そして男の顔をじっ、と舐め回すように見た後――












「みぃつけた……」

 一言、そう呟いた。




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