ホラー短編集
 時間が去年に遡る。

 まだ大学生だった男。今の会社に内定が決まった男に対して、友人達が開いてくれたパーティーの帰り道。

 アルコールが入っているにも拘わらず、男は車を走らせていた。

 街灯の少ない裏道を男が走らせていた時だった。

 男の目の端に白いものが見えた気がした。

 だが、男が気づいた時には遅く、車に鈍い衝撃を受けた。

 ヤバい……男がそう思った時に浮かんだのは、自身の将来の事だけだった。

 事故を起こしたと知られたら、しかも飲酒運転をしていたとバレたら内定を取り消される。

 それしか頭になかった男は、そのまま車を走らせた。

 後のニュースで、被害者は引きずられた事で上半身と下半身が千切れた状態で死亡したと知った男。

 事故を起こした車は山奥に捨てた。事故の痕跡に気づかれないよう、ナンバープレートを外し、わざと窓を割って何年も放置されてるように偽装した。

 そして今日まで、警察が男を尋ねてくることもなく、始めから事故などなかった事のように過ごしてきた。




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