ホラー短編集



 ――イイヨ――

「えっ!?」

 何かが聞こえ、辺りを見回す。でも誰もいない。

「……気のせいか。当たり前よね」

 この家にあたし以外いる訳がないものね。
 わざと明るく振る舞い、不安を打ち消す為につまらないテレビの音量を上げる。

 意識を無理やりテレビに集中させる。

 ワイドショーの内容が芸能の話題に移った時、後方から“何か”の視線を感じた。

 不意に振り返る。やっぱり誰もいない。
 かわりにリビングの開き戸が5センチばかり開いているのに気付く。

 いつもなら気にならないのに――溜め息をひとつ吐き、開いた戸をきちんと閉める。

 なんだか妙に落ち着かない。そこかしこから誰かに見られている様な視線を感じる。

「……よし!」

 一度閉めた戸を開け、玄関の鍵がちゃんと閉まってる事を確認。

 ひとつひとつ部屋の窓の鍵を閉め、カーテンをぴたりと閉める。

 これで大丈夫。部屋を全部調べたから、得体のしれないものに怯える不安はなくなった。




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