ホラー短編集
再びリビングに戻る。今度はちゃんと閉めたのを確認しながら。
つけっぱなしのテレビからは、ワイドショーではなく何年か前のドラマを映していた。
冷蔵庫からペットボトルのミルクティーを取り、グラスに注いだ。
それを飲もうとした時――ミルクティーの水面に自分以外のもうひとつの影が見えた。
「――ッ!?」
反射的に手に持っていたグラスを落とした。瞬間、リビングの床にミルクティーが広がる。
「な、なに今の?」
自分以外の影――あるわけがない。嫌な妄想を絶ち切るように頭をぶんぶん振る。
「いけない、拭かなくちゃ」
慌ててキッチンから布巾を取り、零したミルクティーを拭き取ろうと身を屈める。
広がったミルクティーに映る自分の影の横に
もうひとつの影。
気のせい……なんかじゃない。
固まって動けなくなったあたしに
ぼんやりしていた影の口端が歪み、
キャーッハハハと甲高く笑った。