ホラー短編集
「う……うわああッ!?」
突然の衝撃に叫び声をあげる。すると後方からゲラゲラ笑い声が聞こえた。
「なんだよ。お前、相変わらずビビりだな」
振り向くと中学の同級生のトモヒロがチャリの荷台を両手で掴んでいた。
「……トモヒロッ!? お前が急に出てくるからだろーがッ!」
幼さを残した顔全体をくしゃくしゃにして笑い転げるトモヒロ。
「あー、すっげ久しぶりに爆笑した。で? お前なにチャリ降りようとしてんだよ?」
「ち、ちげーよッ! 深呼吸してから登ろうとしてたんだよッ! それにお前っ、一人だけだったら“爆笑”って言わねーんだからなッ!」
本当は降りようとしてたけど。ギリで“根性なしのヘタレ野郎”な場面を見られずにすんで、ほっとした俺はすぐバレる言い訳とテレビで得た知識を照れ隠しに口にしていた。
「へえ。じゃあ登るんだな。よし。いっぺんでも足を地面につけないか見ててやる」
そう言いながらトモヒロはどかっ、と荷台に座り、両足を投げ出した。
「ほら、何してんだよ? 早く登れよ」
「なんでお前と2ケツしながら登んなきゃなんねんだよッ!? 降りろよ!」
「オレはもうここに来るまでで疲れてんだよ。ほら、後ろから応援しててやるからちゃっちゃっと漕げよ」