【短】とある死神様の霊界事情

***


「よっ...と。」

間に合ったか?


俺は間一髪のところで コイツが地面に衝突するのをスレスレで抱き抱えることで防いだ。


安心すると同時にそこでため息をつく。

何回 自殺者に肩を入れるんだ、俺は。


始末書を書かされるのも何回目になるだろうか?


だが、そんな思いもコイツの顔を見て無くなる。

意識を失ったのか 安らかな寝顔のコイツ。



自殺者の末路を思えば、俺が始末書を書くだけなんて安いもんだ。






ーーー自殺者の末路は俺らみたいな『死神』になり、永久に魂を狩り続けること。






かく言う俺も3年前、自殺して死神となった。

初めて死んで 生きていられることだけで幸せだったことに気づいた。


だが、死んでしまってからでは全てが遅い。


だから俺は死神リストに書いてある死因が『自殺』の人間には自殺をやめるよう言い続けている。


コイツみたいに死ぬのを留まる者もいれば、あっけなく死んでしまう者もいた。

そこからは本人の責任だ。

後は俺には関係のないこと。




...ちなみにコイツにさっき言ったことは嘘だ。

コイツの名前は今日死ぬ予定の死神リストに書いてあった。


だから俺がこのままコイツが落ちていくのを見ているだけだったら 突き落とされて他殺だったとしてもリスト通りに自殺と扱われ死神になってただろう。


そんな最悪な事態を防げただけ良かった。



「...んっ」

コイツが腕の中で小さく声をあげた。


もうタイムリミットか。



俺は優しくコイツを地面に下ろして寝かせた。




次からはもっと強くなれよ。

そんな想いを込めて軽く最後にコイツの頭を優しく撫でた。


遠くから数人の足音が聞こえてくる。



俺が見つかったら面倒なことになるな。

そんなことは分かってるから早くズラかることにする。


まぁそうはいっても姿を透明にするだけなんだがな。



こうして俺はコイツの前から消えた。

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