自惚れ男子の取説書【完】
ラウンド中、思わず302号室の前で足をとめる。ふぅ…っと、無意識にため息がでた。
「こと…じゃない、辻さん。何やってんの」
同期の横田 美沙(よこた みさ)が追い抜きざま、ポンっと軽く背中を叩く。美佐もちらりと302号を見ると、さすがの同期は全てを悟ったようだった。
「夜ご飯行こっか?話きくから」
「うん…ありがと」
「よし。そうと決まれば定時であがるよ!」
同期のありがたい申し出に、気持ちも少し浮上する。
よしっ、と気合いを入れると颯爽と廊下を歩き始めた。