自惚れ男子の取説書【完】

「店の場所わかんねぇって、どんだけ方向音痴なんだよお前」

「ははっ…行こうとしたんですけど、ね。面目ないです…」


小田さんとの2度目の食事。約束していた通り、この間行ったイタリアンレストランに行く事になった。

「現地集合で」とメールに地図まで添付してくれたにも関わらず、迷子になった私。泣く泣く小田さんに連絡すると、駅前待機を言い渡された。


「ったく。俺に迎えにこさせるとはいい度胸してんな」

顎で促され、一段高い肩と並んで歩きだす。

スーツ姿の小田さんは相変わらず目立つ。今日は細身のグレースーツにボルドーのネクタイが映える。
会社帰りのOLらしき女性陣が熱い視線を注ぐのに気づかない訳がなくて。小田さんは完全無視だ。

その横で痛い視線を浴びる私はこんなに肩身が狭いっていうのに…そんな事には気付かないのか、小田さんは全く動じていない。

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