自惚れ男子の取説書【完】
「マンションからそう離れてねぇだろ?地図見ても着かねぇってどんな頭してんだアホ」
「そんな言わなくたっていいじゃないですか。昔から地図見るの苦手なんです。迷うのわかってたから、ちゃんと早めに向かったんですからね!」
「それで着いてないんだから意味ねぇだろ」
うっ…と言葉に詰まる私に、小田さんはニヤリと笑いかける。
そんな悪どい顔ですらカッコよく見えるんだから、小田さんはずるい。
「お前、明日は休みか」
「はい。今日は夜勤明けなんで、夜勤の次の日は休みなんです」
2交代制のうちの病棟では夜勤明けの次の日は必ず休みだ。夜勤は長時間でかなりハードだけど、その分しっかり休みがとれるので私は好きだ。
「ふーん。俺も明日は仕事ないし、とことん飲むから。よろしく」
「えぇー人の奢りだと思って!ちょっとは遠慮してくださいよっ!!」
そんな軽口をたたきながらも、デートの雰囲気に自然と口角があがる。時折触れる肩にドキっとしながら、レストランへと向かった。