自惚れ男子の取説書【完】
おずおずと袖を通してみると長袖のTシャツはすっぽりと手が隠れる程。スウェットの裾も爪先が辛うじて出るか出ないか。
端から見ると妙にエロイ格好だ。でもそんなことより……
小田さんの……匂いがする。
「変態かっ……!」
無意識にとんでもない事考えてた……。
小さく自分に突っ込むと、自分の頬を叩いて気合いを入れる。
……どんな顔して出てけばいいんだろう。
いつまでもこの部屋にいるわけにはいかない。散らかった部屋を探してみても、私の服やバッグが見当たらない。小田さんに聞いてみないと。
荷物を探すふりをして、ちらりと部屋の本を捲ってみる。心理学に始まり、インフレデフレ、広告の効果、株……
あまりに無作為な本だけど、彼の事だからすべて理解しているんだろう。つくづく恐ろしい男だ。