自惚れ男子の取説書【完】
ここ数ヶ月で善次郎さんの身体には限界がきていた。可能な治療も尽き、残るは痛み苦しみが少ないよう薬を使うだけだった。
「善次郎さん、会いたい人…ちゃんと呼ばなきゃですよ?」
「んー?おう」
薬を使えばほとんど眠ったようになる。
私の意図を知ってか知らずか、善次郎さんはふふっと可笑しそうに笑った。
意識がなくなる前お別れを言うために、連日多くの人が善次郎さんを訪れた。
その中に娘さんはいなかった。