自惚れ男子の取説書【完】
「本当に小田さんには甘えっぱなしで、すみませんでした!みっ…美月さん来るんですよね?分からないように帰りますから。安心してください!」
「あ?別に…隠さなくても困りはしねぇだろう」
そりゃあね。何もやましい事はなかったんだと思うよ。
でも美月さんにしてみれば…それに私は……
「いえ!私が困るんです!美月さんに悪いので」
「はぁ?ちょっ…お前」
オートロックからこの部屋まで少し時間がある。今から階段ででも降りれば、鉢合わせしなくて済むはずた。
どうか間に合って。
小田さんの言葉を遮るようバッグをひっつかむと、ガバッと頭をさげ玄関へと急ぐ。
引き留める小田さんの声には耳も貸さず、私はそこから逃げる事に必死だった。きれいに揃えられたパンプス。お気に入りの細いストラップも、今日ほど忌々しく思った事はない。とりあえずむくんだ足をねじ込み、ドアノブをぐっと掴んだ。