自惚れ男子の取説書【完】

目が眩むような朝日がドアの隙間から差し込む。高層階にある小田さんの部屋は、何も遮るものがなく反射的に目を細めた。


「あら……この間の」


まぶしい朝日を遮るよう現れたその人は、大きな目を丸くさせた。
美月さんは相変わらず化粧っけがほとんどない。デニムにパーカーの簡単な服装なのに、ショートヘアを耳にかけるその仕草は十分に色気がある。


「この間の看護師さんですよね?病院で会った」

動じる事なく尋ねる美月さん。小首をかしげる可愛らしい様に、いつもなら見とれちゃうくらい。だけど…


私は……何て事をしたんだろう。


”この間来た”のはきっと最近の話。あの簡単なやり取りだけで、決して美月さんは”昔の女”なんかじゃないのがわかってしまった。









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