自惚れ男子の取説書【完】
その自然な可愛らしさに1人沸き上がる罪悪感と敗北感。目の前がどんどん真っ暗に塗りつぶされていく感覚。
ぎゅっと力を入れ堪えていたものは、呆気なく頬をつたって溢れていった。滲む視界の中なんとか美月さんの顔をとらえる。
「……みません、私……」
「えっ……?何っ、どうしたんです?」
「ごめんなさいっ…美月さん。でも何でもないんです…!だっ…から……」
もう溢れだしたそれは今更後には引けなくて。
「本当にごめんなさい!」
そう叫ぶやいなや、美月さんの脇をすり抜け閉じかけたエレベーターに身体を滑り込ませる。