自惚れ男子の取説書【完】
かすかに聞こえたテノールに後ろ髪を引かれるけど、それを振り切るよう勢いよく飛び込む。チンっと扉が閉まる音を合図にそのまま座り込んでしまった。
「……っ…ふぇ……っ」
あそこは…私がいて良い場所じゃない。私じゃなくて、美月さんの場所なんだ。
「もぉ………や…だ…」
紺紺とわき出るそれは、ぬぐってもぬぐっても止まる気配がない。やがて嗚咽が込み上げ、言葉にならない代わりに心の中で叫び続けた。
なんで……小田さん。
小田さん…
小田さん……