自惚れ男子の取説書【完】
3
朝の病棟は特に忙しい。
主治医に指示を受けたり、申し送ったり。検査出しに点滴作成。引き継ぎと共によーいどんで始まる、命の戦場だ。
「先輩、すみません…5号の人血管みつかんないですぅ…」
泣きつく夜勤者の後輩。
5号の松山さんは無事食道の手術を終え、昨日病棟へ戻ったばかり。今日は私が担当する予定だ。
確かに手術前から血管が細くって、みんな嘆いてたっけ。
「温めてはみたの?」
「はい…夜勤3人で代わる代わる探したんですけど……琴美せんぱぁい」
しょぼしょぼの目をしばたかせ泣きつく様子から、相当苦労したみたいだ。
本当なら夜勤がやるべき仕事なんだけど…この際仕方ない。