自惚れ男子の取説書【完】
「はいはい、ちゃんと名字で呼びなさいね。検査出し終わったら余裕あるから、頑張ってみるわ。ほれ、さっさと記録しちゃいなさい」
「す、すびません…」
パシッと軽く肩を軽く叩いただけで、よろよろっとふらつかれる。術後の管理は特に気を使うし、処置も多い。書きかけの記録を見ても、昨夜は相当大変だったようだった。
とにかく早く帰れるよう、もらえる仕事はやってあげるとしよう。
「しっかし驚きました、先輩」
手早く点滴をまとめラウンド準備をする私を、後輩はぽへっとした目で観察してくる。
「それ、本物ですか?」
指差す先には、お団子頭をばっさりと切り落とし耳下のボブへと変貌を遂げた私の頭。髪を結ばなくてすむ、ギリギリの長さだ。
「なぁに?ヅラじゃないわよ。本物だって」
さらっと手の甲でなびかせた髪は以前に比べぐっとボリュームダウンしたせいで、なんだか物足りない。その感覚になかなか慣れなくて、ここ数日鏡の自分に驚く事もしばしばだ。